膝の痛み|半月板の問題(Meniscus)
半月板は、膝関節(大腿脛骨関節)における主要な安定機構のひとつで、大腿骨顆と脛骨プラトーの間に介在する線維性軟骨(C字状/O字状)です。
本来適合性が高くない膝関節において、半月板は荷重分散・適合性向上・潤滑性の確保を担い、屈伸・歩行・階段動作をスムーズにします。
半月板の役割(機能解剖)
適合性の向上:大腿骨と脛骨のコングルエンスを高め、関節安定性を補助
荷重分散/衝撃吸収:接触面積を拡大し、単位面積当たりの関節反力を低減
潤滑・栄養:半月板により生じる関節間隙を滑液が満たし、摩擦を軽減
運動学習への寄与:関節受容器を介し、**位置覚・運動覚(プロプリオセプション)**を補助
半月板の運動(運動学)
膝運動に伴い半月板は前後へトランスレーションします。
| 動作 | 内側半月 | 外側半月 |
|---|---|---|
| 屈曲 | 後方移動 | 後方移動 |
| 伸展 | 前方移動 | 前方移動 |
| 内旋 | 前方移動 | 後方移動 |
| 外旋 | 後方移動 | 前方移動 |
半月板の移動は、**関節包・半月大腿靭帯・半月脛骨靭帯・側副靭帯・筋付着(半膜様筋・膝窩筋 等)**の協調で制御されます。
種類と特徴
内側半月板
形状:C型/厚み:約12mm
連結:内側側副靭帯(MCL)、半膜様筋付着
特徴:関節包との連結が強く可動性が小さい→負担が大きく損傷頻度が高い
外側半月板
形状:O型/厚み:約6mm
連結:膝窩筋付着、関節包との連結は比較的緩い
特徴:可動性が大きく→損傷頻度は低い
血行・神経支配(治癒ポテンシャル)
Red zone(外側1/3):血管・神経が分布 → 自然治癒が期待しやすい
White zone(内側2/3):無血管領域(滑液栄養)→ 自然治癒は乏しい
※可動によるポンプ作用が代謝に寄与
典型的症状(半月板損傷)
膝関節裂隙(内側/外側)の圧痛・痛み
屈伸時の引っかかり・クリック、腫脹・関節水腫
ロッキング(伸展不能/屈曲不能)を呈することも
損傷の原因とリスク
スポーツ外傷:着地・切り返し時の屈曲+回旋ストレス
**ACL・MCL合併損傷(不幸の三徴/アンハッピートライアングル)**に注意
加齢変性:中高年の反復負荷による変性断裂
先天形態:**円板状半月(主に外側、国内頻度約10%)**は負荷集中により易損傷
運動連鎖不全:股関節内旋制限、足部過回内、骨盤帯機能低下など
赤旗:外傷直後の強い腫脹、膝崩れ、明確なロッキング、可動域著減は整形外科での画像診断(MRI等)を推奨。
カイロプラクティック/オステオパシーの評価とアプローチ
半月板自体の断裂を徒手で修復することはできません。しかし、半月板に過負荷を生む機能不全を正し、痛みの軽減・保存療法の促進・再発予防に寄与できます。
評価(ファンクショナル)
関節機能:脛骨回旋、脛骨前後・内外反、大腿脛骨・膝蓋大腿関節の可動性評価
軟部組織:半膜様筋・膝窩筋・ハムストリングス・腸脛靭帯・大腿四頭筋の過緊張/拘縮/筋力低下
運動連鎖:股関節外旋・外転機能、骨盤前後傾、足部アライメント(回内/回外)
神経分節:L3–L5/S1の反射・筋力・感覚スクリーニング
疼痛誘発:McMurray/Thessaly/Apley(必要に応じ実施・鑑別)
施術(目的:半月板への二次負荷の軽減)
カイロプラクティック
関節アジャストメント:
脛骨回旋の機能回復、脛骨の前方・後方シフトの是正
股関節・骨盤・足関節のサブラクセーション是正で**荷重線(メカニカルアクシス)**を最適化
神経運動制御:プロプリオセプション改善、膝蓋大腿トラッキングの最適化
オステオパシー
筋膜リリース/軟部組織テクニック:ハムストリングス、腸脛靭帯、膝窩筋、半膜様筋の張力バランス再編
内臓・体液循環サポート:リンパ還流・滑液循環を促すソフトアプローチ
全体治療(Holistic):骨盤帯・腰椎・足部を含む運動連鎖の再統合
これらにより半月板運動(前後トランスレーション)の円滑化を図り、圧縮ストレス・剪断ストレスの軽減を目指します。