坐骨神経痛とは
坐骨神経痛(Sciatica)は、お尻から下肢(太もも〜ふくらはぎ〜足先)にかけての痛み・しびれを主訴とする症候群です。
坐骨神経は腰椎(L4〜S3)から分岐し、骨盤・殿部・大腿後面・下腿・足部へと走行する、人体で最も太く長い末梢神経です。
この神経が圧迫・牽引・炎症・循環不全などのストレスを受けることで、疼痛・しびれ・灼熱感などの症状が出現します。
ただし「坐骨神経痛」という名称は病名ではなく症状名であり、
頭痛や腹痛と同じように「何らかの要因によって神経が刺激されている状態」を指します。
主な症状
お尻から下肢にかけての灼熱痛・放散痛・しびれ
**腰の動き(前屈・後屈)**によって増悪する
長時間の座位で痛み・しびれが悪化
歩行時の痛み・脱力感により、歩行困難を伴うことがある
重度例では下肢筋力低下・排尿障害を伴うこともあり、早急な整形外科受診が必要
坐骨神経痛の主な原因
坐骨神経にストレスを与える要因は多岐にわたります。
以下は代表的な5つの原因と特徴です。
① 椎間板ヘルニア(Lumbar Disc Herniation)
椎間板が膨隆・脱出し、神経根を圧迫することで発症。
前屈姿勢や咳・くしゃみなどで増悪。
20〜40代に多く、L4/L5・L5/S1レベルでの発症が典型です。
② 腰椎すべり症(Spondylolisthesis)
分離すべり症:思春期の疲労骨折(分離症)が原因で椎体が前方へすべる。
変性すべり症:加齢変化により椎間関節や靭帯の支持性が低下。
後屈動作で悪化するのが特徴。
③ 脊柱管狭窄症(Lumbar Spinal Stenosis)
加齢により椎間板や靭帯、骨が肥厚し、神経の通り道(脊柱管)が狭窄。
特徴的症状:間欠性跛行(10分歩くとしびれ、休むと改善)。
50代以降に多く、後屈動作で症状が増悪します。
④ 筋肉性(トリガーポイント/梨状筋症候群)
お尻の深部筋「梨状筋(Piriformis Muscle)」の過緊張や炎症により、
すぐ下を走行する坐骨神経を圧迫。
臀部の圧痛・放散痛・座位時の疼痛が特徴。
また、腰方形筋や中殿筋、ハムストリングスのトリガーポイントも類似症状を呈します。
⑤ 関節性(椎間関節・仙腸関節障害)
椎間関節性腰痛・仙腸関節障害・殿皮神経痛など、関節機能不全に起因するもの。
**局所圧痛と動作痛(特に後屈時痛)**がみられ、放散痛はあるが神経学的異常は乏しい。
このタイプは画像検査で異常が出にくく、**機能的障害(Functional Disorder)**としてカイロプラクティックの適応になります。
整形外科疾患タイプ vs 機能障害タイプ
| タイプ | 主な原因 | 特徴 | カイロプラクティック適応 |
|---|---|---|---|
| 整形外科疾患タイプ | 椎間板ヘルニア、すべり症、狭窄症 | 画像検査で異常が確認できる | 併用で効果あり。症状軽減・回復促進 |
| 機能障害タイプ | 筋・関節の可動制限、姿勢性負荷 | 検査異常なし。神経学的異常なし | 最も得意。短期で改善が期待できる |
坐骨神経痛は治るのか?
【機能障害タイプ】
臨床上、多くの症例で1〜4回程度の施術で改善傾向がみられます。
カイロプラクティック的調整で神経ストレスを解除することで、症状の軽減・再発予防が可能です。
【整形外科疾患タイプ】
重症度や原因疾患(ヘルニア・狭窄症など)により改善度は異なりますが、
カイロプラクティック・オステオパシー施術により血流改善・神経緊張の緩和・可動性回復が期待できます。
臨床的には**中長期マネジメント(約3ヶ月)**が推奨されます。
カイロプラクティック・オステオパシー的アプローチ
カイロプラクティック(Chiropractic)
アジャストメント(関節矯正)による椎間・仙腸関節の可動性回復
**神経干渉(Neurological Interference)**の除去
**姿勢連鎖(Kinetic Chain)**を整え、神経の圧迫ストレスを軽減
オステオパシー(Osteopathy)
筋膜リリース・内臓マニピュレーション・頭蓋仙骨療法による全身循環改善
筋緊張・体液流・自律神経バランスの正常化
骨盤帯・腰椎・股関節を含む**全体治療(Holistic Treatment)**で再発を予防